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映画『ロブスター』ーセックスと嘘と人間的ライフ
2016 / 06 /13 月

映画「ロブスター」を観た。

♡♥♡

映画 『ロブスター』-予告編

♡♥♡

『質問しない。それがこのコメディを楽しむ鍵となる。』
公式ホームページにはそう書いてある。

そのとおりの映画だ。
主人公のオッサンが足下の犬を「私の兄だ」と言っても、「え?」と隣と顔を見合わせるヒマはない。そんなことをしているうちに、次の「え?」を見逃すからだ。
この映画に描かれる世界はあたしらがいる世界と見かけ上、なんの違いもない。
アイルランドの美しい自然と、しごくノーマルにみえる中年の男女たち。
しかし、ここには異常なルールがある。

【ルール】
独身者は45日以内にパートナーを見つけること。
さもなくば動物にさせられる。(なりたい動物の希望は叶えられる)
なぜなら、独身は罪だから。

「は?」

頭の中にいくつものクエスチョンが浮かぶ。
この映画はまるでシュールなコントだ。
しかし、登場人物の誰も、ツッコミをいれることはない。
ツッコミは、何らかの異常事態をすくいあげことで、緊張をほぐす愛だが、この映画では絶望的なまでに、その愛は欠けている。
もちろん、意図的に。
ツッコミのない投げっぱなしの世界からは、居心地の悪い気まずさが漂う。
しかし『質問』はせずに、その異常な世界を見守ろう。
それがこの映画をみるときのルールだから。

できるだけ平坦な気持ちで眺めながら思う。
異常なルールも、その世界の住人には、ただの日常なのだということを。

♡♥♡

主人公は中年の男。さえない風貌。妻に別れを告げられ、独身者となった。
彼は謎めいたホテルに送られる。
そしてそこで、45日以内に、パートナーを見つけなければならない。

ホテルをでるとき、彼は動物か?それとも人間のカップルか?
45日後、彼はどういう姿で再生するのだろう?

もしパートナーにめぐまれなかったら、何の動物になりますか?
彼は「ロブスター」と答える。
「寿命が長くて、死ぬまでセックスできるから」

ロブスターの語源をひくと『もがく』という意味がでてくる。
文字通り、彼はもがいてる。
パートナーとは?愛とは?セックスとは?人生とは何か?
その大問題に振り回されながら。

♡♥♡

美しい画面と、ブラックなユーモア。
そして耳の中で残響する、流麗だが不協和音満載のクラシック。
映画の間中、クラクラしながら、あたしは考えていた。

結局、何が幸福なのだろう?
どういう選択をしても八方ふさがりじゃないか。

独身者も、既婚者も、離婚者も、死別者も、誰もかれもに容赦ない結末がまってる。
甘い回答など、用意されていない。
甘くはないが、しかし、味わい深い。
それぞれの、理不尽な末路にはどれもこれもリアリティーがあり、これが人生なのだと納得する。
この寓話的世界は、あたしたちの話なのだ。
ただもがくしかない、あたしたちの。

♡♥♡

真のパートナーとはどんな存在なのだろう?

象徴的なシーンがある。
主人公が彼女と、CDプレイヤーで電子音楽を聴いている。
同時に「再生」ボタンを押せるよう、何度も訓練する。
完璧な同期をめざして。

自然に『同期』してしまうような相手、それが伴侶というものだろうか。
そういう伴侶を得るということが、文字通り「再生~再び生きる」ということだろうか。

しかし、真のパートナーを得ることが、幸せなのか?
相手とぴったり同期してしまうということは、相手の悲しみも苦しみもすべて、自分の悲しみ、苦しみとイコールだ。
辛さも二人分、引き受けなければならないということだ。
分かち合うことでそれが半分になったところで、結局苦しみの総量は、ひとりでいるときと同じということになる。

♡♥♡

そこであたしは、思う。
独身でいた方が、よくなくなくなくなくなくなーい?

自分にぴったりの相手が、限られた期限に見つからなくて、動物にされて森に放たれたとしても、動物には一人で生きていける能力がある。人間と違って。

それこそ「自由」ではないか?

あたしは、結論を見いだしたような気持ちになる。
勇気をもって、動物になろう。そして森で自由に生きよう。

しかし、次の瞬間、また愕然とする。
森には、動物になることを拒んで、ホテルを逃げ出した「人間」の独身者たちがいるからだ。

ルールをやぶった反抗者たちは、結局、動物にされるのと同じように、家もなく、森で暮らすしかない。
そしてカップルになった者たちを恨みながら、殺伐と生きている。森の動物を食べながら。

ここでまた、厭なことに気づく。
森の動物もまた、元・独身者じゃないか。
つまりこれって。
共食い・・・。

独身をこじらせた奴らに、独身を謳歌するけだものが喰われるなんて、まっぴらだ。

♡♥♡

あたしは再考する。
そうだ!打算で相手を選べばいいんだ。
愛してなどいなければ、相手の苦しみが自分の苦しみになることもない。
ひがんだ奴らに喰われることもナイ。

恐れのあまり、打算でパートナーを選ぶというようなことは、こっち側の世界でもよくある話だ。

・・・が、しかしやっぱり、思った通り、そういう選択の末路はひどいのだ。

ウソはすべて、不幸にしかつながらない。
自分自身を偽ることで、周辺の人までも、破滅したりする。
例えば。何かが違う、何かがおかしいと気づいていても、いいや、あたしは、やっぱりあの人が好き、あの人じゃないとだめなの、みたいな、かわいいウソですら、不幸の扉を開けるカギだ。

どんなに小さくても、自分自身を偽ることは結局、自傷行為なのだと、この映画は語る。

♡♥♡

『質問しない。それがこのコメディを楽しむ鍵となる。』
公式ホームページにはそう書いてある。

しかし、あたしの頭の中は、映画をみたあとも質問でいっぱいだ。 理解できているのは、いい映画はいつも問いを残すということだ。

ラストシーン。暗転し、波の音だけが鳴っている。
不穏な音楽はもう聞こえない。

バッドエンドなのか、ハッピーエンドなのかすら、もう分からない。

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