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2016 / 11 / 04/ 金

五十嵐大介「ディザインズ(1巻)」を読んだ。

◊◊◊

五十嵐大介「ディザインズ(1巻)」

◊◊◊

五十嵐大介さんの絵をみていると、「絵を描くということはどういうことか?」という問いを、つきつけられる。
それはデッサンを学んでいた高校生の頃に初めてぶちあたった壁で、今でもすがりついては痛いめにあっているアレだ。

◊◊◊

週4回、画塾に通っていた17歳のあたしは、デッサンに苦しんでいた。
配られるモチーフは大抵、とるにたりない日用品で、興味が持てない。
牛乳パック、ティッシュの箱、刷毛、カップラーメンの空き容器、割り箸、紙コップ、新聞紙、まるめた紙、ださいバンドのレコード・・・。
描きたいと思うモノはほぼない。形もろくにとれず、気持ちも入っていない絵はいつも、講評で「ゴミ」扱いだった。

◊◊◊

ある日、フランスパンがモチーフとして配られた。
乾ききったパンに、ささくれだった自分の心を投影できる気がして、断面の穴や表面のひびをくまなく見つめて描いた。

結果、紙面にあらわれたのは、病的な描線がうずまく、ものすごく気持ちの悪いパンだ。
しかし、はじめてほめられた。
そのフランスパンには、あたしだけのモノの見方が入ってるからいいんだ、と先生は言った。

◊◊◊

絵を描く時に、ほんとうに大事なこと、それは「発見すること」だった。

牛乳パックはどの角度で描けばかっこいいのか、
カップラーメンの容器が映える「あたしが思う正面」はどこか。

描くことは手を動かす以前にはじまるのだということを、あたしは何枚も紙ゴミを増やしながら理解した。

◊◊◊

五十嵐大介さんの絵を見ていると、「自分だけの発見」を探っていた、かつての自分の純粋さを思い出す。
世界の美しさをはじめて発見できたときの気持ちの高揚が、五十嵐さんの絵にはあるからだ。

それは何枚も、何百枚も描くと、たいていは失われてしまう純粋さだ。
年をとり手慣れてくると、世界をわかった気になって描いてしまう。
五十嵐さんの絵から、そういう傲慢さは感じない。

彼の「描くための眼」が、不思議は不思議のまま描ける不思議さに満ちていることに、ただただ驚くばかりだ。

◊◊◊

繊細でたよりない1本1本の線は、さぐりさぐり置かれたのだとわかる。
とぎれがちな線が集まり、結果、五十嵐さんの「発見」が、奇跡のように形をなす。

とぎれた部分すら意味を持つ。
それは「世界のわからなさ」を雄弁に語っていて、そのこと自体が美しい。

◊◊◊

あたしは五十嵐さんの絵をみながら、まるでシャーマンのように、何者にもなれる気がしてくる。
雨粒になって地面にうちつけられ、蛇になってジャングルを這い、蝶になって飛ぶことのできる眼になれる。

自然にも動物にもヒトにも機械にもなれる眼で、描かれる世界。
ページをめくる度に、彼が発見した世界への感動が、ダイレクトに伝わってくる。

◊◊◊

五十嵐さんは登場人物にこんな台詞を言わせる。

俺は狩りが好きだ
狩る瞬間
俺は”世界”になる
(中略)
俺を見る者を
同時に見る
(中略)
雨になり
風になり
鳥になる
草になる
(中略)
狩りの瞬間
その場のすべてになる
世界になる

この台詞を言う人物は、イルカの能力をもつ、遺伝子レベルでデザインされた子供だ。
が、あたしには、五十嵐さんが絵に向かう態度を表明しているように思える。

◊◊◊

五十嵐さんは、イルカやヒョウやカエルになりながら、描いているのだろう。

◊◊◊

そしてあたしは、その見いだされた世界の美のストックの多さによろめき、ただただ無力なまま、見つめ続けている。

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